空雨傘と自分ごと

2021.2.14

フレームワークなんかこれだけでいい

ITの世界でフレームワークといえば(この後の横文字は飛ばしていい)SymfonyやRails、Strutsなどのソフトウェア・フレームワークを指すことが多いが、一般的にフレームワークといえばビジネス・フレームワークのことだろう。

ビジネス・フレームワークとはビジネスに必要とされる論理思考や発想法などを体系的にまとめたものの総称で、有名どころで言えばSWOT分析とかPPM分析などがある。もちろん、これだけじゃなくてビジネス・フレームワークを集めればそれだけで一冊の本になるくらい多種多様なフレームワークがあるのだが、数あるフレームワークの中でもっともシンプルかつ重要だと思っているのが「空雨傘」である。

空雨傘とは

「空雨傘」とは、情報を事実→解釈→行動に分解して思考を深めるためのフレームワークだ。

  • 空(事実)...黒い雲が急に広がってきた
  • 雨(解釈)...雨が降ってきそうだ
  • 傘(行動)...傘を持って出かけよう

仕事の現場では「こうなることはわかっていたはずなのに」というケースが往々にしてある。たとえばパソコンの故障を考えてみよう。

  • どうもコンピュータの中から異音がする(事実)
  • 機械が壊れかかっているようだ(解釈)
  • 使えなくなる前に修理に出そう(行動)

普通はこうなるはずなのだが、現実的にはそうじゃないことも少なくない。その場合の思考回路は以下のようになる。

  • どうもコンピュータの中から異音がする(事実)
  • どうもコンピュータの中から異音がする(思考停止)
  • コンピュータが壊れたようだ(自業自得)

障害対応の現場に着くと社員さんが自信なさげに「何にもしてないんですけど...」というのを何度聞いたことだろうか。機械は必ず壊れるものなので社員さんに罪はないが、動かなくなって途方に暮れた原因の大半は「何かをしたこと」ではなく「何もしなかった」ことにある。なぜ異音がしてるのに何もしないんだ!?

大事にはいたらないケースが多いから笑い話にもなるが、自分の身を振り返れば「ああ、あの時に気がつくべきだった。考えておくべきだった」という経験がない人はいないんじゃないだろうか。きっと部下(または同僚や上司)に対して「問題は事前に防げたろう!もうちょっと考えろよ!!」と責める気持ちになったことだってあったはずだ。

しかし、漫然と日常を過ごしていると「解釈」がおろそかになるんだよね。いや、「事実」に気づきもしなくなってしまうのだよ。それに、自分が理解できないことには「解釈」が及ばないことも多い。前述したパソコンの故障なんかはその典型たるものだ。わからないことはおっかないからね。だけど、「解釈」が及ばないからといって放置しちゃうと「行動」が遅れて、すべてが後手後手に回ってしまう。最終的にひとつの遅れがまわりの仕事全部に影響しちゃって大きな問題になる...なんてよくある話だ。

すべては自分ごと

常に先手を打って、スムーズに仕事を進めたいと思えば、まずは「事実」に気づくこと。じゃあ、どうやったら気づけるんだろうか?

ひとつの提案として、会社で起こっていることは全部自分ごとだと思ってみよう。
気がつく、気が利く、気が回る人はそうでない人はどこが違うのだろう。気が利く人はいろんなものを見ている。いろんな話を聞いている。で、細かいことに気がついている。気がつくから、それに対処ができる。気が利かない人はいろんなものに関心がない。すぐ目の前にあっても見えてさえいない。結局、自分に関係のないものは視界に入ってこないのだ。関心のないことに関しては話も聞こえていない。集中力が高いのかと思っていたらそうでもなく、ただ単に関係ないと思っているだけだったりする。だけどね、会社で起こっていることに他人ごとなんてないんだ。

いつの間にか洗ってあるコーヒーカップ、洗ってくれてるのは誰?給湯室の三角コーナー。水きりネットはどこにしまってあるの?ごみ箱のゴミくらいは自分で捨ててるかもしれないが、それをゴミを処分しているのは誰?台布巾の殺菌と漂白をしてくれてるのは誰?在庫が切れたトナーの発注は誰がどこにしているの?仕事はどこからやってくるの?請求書はだれがどうやって出してるの?

あなたが気持ちよく仕事ができるように、細かいことを受け持ってくれている人がいる。そういう人たちの仕事に思いを馳せてありがとうという気持ちになれないひとに気づきなんか訪れない。気づかない人は解釈もできないし、先手を打てない。目の前も見えていないのに、仕事なんかうまくいきっこないよね。会社でも自分の家でも、いろんなことを自分ごとだと思って積極的に気づいていくことで、感謝も生まれるし、仕事もうまくいくんじゃないかな。

うちの会社の行動指針にある「深読みはするな。先読みをしろ。」っていうのは、そういうことだ。精神論はあんまり好きじゃないけど、ちゃんとした仕事をするためには人間的な成長が必要だし、人間的成長は普段の生活を考えることから始まるんだと思うよ。

(「深読みをするな」については来週書く。というか、公開する順番を間違えたぜ)